新潟県長岡市の司法書士事務所

アドリテム司法書士法人

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債務整理

もっと知ろう消費者金融(サラ金)のこと

>>サラリーマン金融とは

サラリーマン金融は、読んで字のごとくサラリーマン、つまり一般の人を対象にお金を貸し出す業者です。第1次サラ金パニックで、「サラ金」は悪の権化のように言われましたので、業界では「消費者消費者金融」という新たな言葉を作り出し、イメージを変えることに努めてきました。

さらには、新聞や雑誌の広告でイメージ宣伝を繰り返し行っています。かつてはサラ金の広告など決して流さなかったTV局、同じく広告など掲載しなかった新聞社に、今はサラ金の広告があふれています。TV局、新聞社とも広告収入が大きな収入源です。不況で企業の広告が減る中、マスコミ各社も背に腹は代えられなかったのです。結果、マスコミのサラ金追及の手はゆるみ、今や積極的に宣伝する側になってしまいました。

平成10年頃になると、サラ金金各社は史上空前の利益をあげ、銀行さえもしのぐものでした。大手サラ金業者は次々と株式上場を果たし、一流企業の仲間入りをしたと自負しているようです。 しかし実体はというと、サラ金パニックの頃と変わっていない面もありました。

>>第1次サラ金パニック

昭和59年頃、第1次サラ金パニックがありました。当時の金利は100%くらいで、一般のサラリーマンがひとたび手を出せば、容易に返せるはずもない高金利です。自殺、蒸発という事態が全国的に相次ぎ、自己破産件数も急増しました。マスコミもこれを大きく報道して、社会問題化し、現在の貸金業規制法ができました。

>>第2次クレジット・サラ金パニック

平成3年頃より、自己破産申立件数が急増してきました。それまでは、サラ金による借入が多重債務に陥る原因だったのが、クレジットによる借入も現れてきました。「カード破産」という流行語まで産まれましたが、「カード破産」に象徴されるカードの使いすぎによる破産は現実ではわずかで、マスコミがニュース生を高めるために大きく報道されたことによる流行語と思われます。

破産申立件数はその後減少することなく増加し、平成10年には、ついに10万件を突破しました。

>>サラ金3悪
1. 高金利

貸金業者の金利の上限は現在年29.2%です。これは出資法に定められている上限金利です。平成22年6月18日からは、年20%となります。 一方利息制限法という法律では、次のように定められており、この上限金利を超える部分は無効と定められています。

  • 10万円未満, 年20%
  • 10万円以上100万円未満, 年18%
  • 100万円以上, 年15%

この利息制限法の金利から出資法に定められている上限金利までの間は「グレーゾーン」と呼ばれています。民事上は原則無効ですが、刑事罰の対象にはならないのです。

原則無効と書いたのは、例外があるからです。これは貸金業規制法43条に定められています。そこには、利息制限法に定める利息制限額を超える場合でも、債務者が利息として任意に支払い、さらに業者が法定の書面をきちんと交付している場合は、有効な利息の支払とみなすとあります。「みなし弁済」と呼ばれています。

このみなし弁済規定のおかげで業者は高金利を得ているわけです。ところが、業者のほとんどは法定の書面を債務者に交付していません。法定書面というのは、借りるときの契約書と、返すときの受取証書です。こられは法律で厳格に規定されており、業者がきちんと交付したとしても、機械(ATM)での書面は法定書面にあたらないとする判例などもあり、実際にはみなし弁済が成立することは、ほとんどありません。 つまり利息制限法により無効な支払を、業者は受けていることになります。

今の時代この金利がいかに高いかは、説明するまでもなくよくおわかりかと思います。大手サラ金業者の利息でも30%前後です。住宅ローンの金利が今3%という時代です。住宅ローンの2000万円とサラ金の借入200万円では1年間で発生する利息は同じ訳です。

平成11年秋頃、商工ローンが社会問題化し、それがきっかけで上限金利が平成12年6月から29.2%に下がりましたが、この金利ではまだまだ高いと言わざるを得ません。29.2%という金利は大手業者の貸出金利とほぼ同じであり、大手業者にとっては現状に何ら変化はなかったと言われています。

しかし平成22年6月18日ようやくみなし弁済規定が廃止されました。利息制限法と出資法の上限金利は、完全には一致していませんが(例えば、100万円を年利20%で貸した場合、出資法上は上限金利内)、貸金業者が利息制限法を超えた利率で貸し出した場合、行政処分の対象となりますので、事実上グレーゾーン金利もなくなることになります。

利息制限法の金利さえ現在の低金利時代には、高すぎると思いますので、今後は利息制限法の金利を引き下げる運動をしていく必要があると思います。

2. 過剰融資

旧貸金業規制法13条には次のように規定されていました。昔から過剰融資は禁止されていたのです。

「貸金業者は、資金需要者である顧客又は保証人となろうとする者の資力又は信用、借入れの状況、返済計画等について調査し、その者の返済能力を超えると認められる貸付けの契約を締結してはならない。」

ところが現実には、次のような貸付が行われています。

  1. 無職の主婦に対する貸付
  2. わずかな年金収入しかない高齢者への貸付
  3. 借入額が多額で返済できる見込みがない者への貸付

貸金業者は、貸せば貸すほど儲かるのです。大手サラ金の貸倒率は4%未満とも言われています。多少の危険があろうが貸し付けます。危険を覚悟の上というならまだ聞こえはいいですが、現実はどこかから返済資金が用意されることを期待しているのです。

例えば1.のような場合は、夫の収入をあてにします。ひどい業者になると支払義務のない夫に請求することさえあります。
2.や3.のような場合は、まだ貸してくれる業者があると判断して貸し付けます。つまり他社から借りて自分のところに返してくれればそれでいいのです。

ちなみに借り入れるとき他社からの借入を記入する欄がありますが、業者は申込者が書く数字をあてにしていません。業者は情報機関に問い合わせをすれば、その人がどのサラ金からいくら借りているのかわかるのです。この金額を調べて、まだ他社から借りられると思えば貸しますし、危ういと思えば保証人を要求したうえで、貸し付けます。貸出を断る業者はまだ良心的な方です。 さらには一般的に言えることですが、世間体を気にする親族からの返済も業者はあてにしています。

近年は、「無人契約機」なるものが出現して、サラ金の過剰融資はエスカレートしてきました。借金というのは誰でも後ろめたい感じがするものであり、抵抗感があります。その感覚を麻痺させ、どんどん貸付け、儲けようというものです。

平成22年6月18日からは貸金業法が改正され、総量規制が実施されています。年収の3分の1しか借りられません(例外はあります)。また無職の主婦は夫の同意がなければ貸し付けを受けることができません。過剰融資には強制的に歯止めがかかったと言うことができるでしょう。今後は銀行が低利で個人に融資をすることが期待されていました。しかし実際にはサラ金に代わり銀行が過剰融資を行うようになってしまいました。貸金業者には総量規制がありますが、銀行には適用されないことを悪用しています。多いに問題があります。

3. 過酷な取立

第1次サラ金パニックの時、過酷な取立が大きく報道され、その後の大蔵相の通達により、請求の時間制限や暴力的な取立など具体的に取立の禁止事項が定められ、一時的に過酷な取立は治まったかのように見えました。

ところが現実は、大蔵相の通達を無視した取立が行われ続け、現在に至っています。外見上あまりにひどい暴力的な取立は確かに減りましたが、「暴力的な取立が来るかもしれない」と恐怖心をあおる取立や、言葉の暴力が目に余ります。

監督官庁に苦情を申し述べれば、ほとんどの場合ひどい取立は止まりますが、監督官庁が苦情を取り上げてくれなかったりすることもありました。また刑事罰にあたるような取立が現に行われているのに、通報しても民事不介入を口実に全く相手にしてくれない警察も多かったようです。

>>借金で自己破産する人は被害者です

借金をして破産をする人間がどうして被害者なのかと思われるでしょう。サラ金から借金をしても全員が破産するわけではありませんし、借りた人間が一番悪いのは確かです。借りたものを返すのも当たり前のことで、それができないことはルール違反です。

しかし、現在の日本のシステムでは破産者はなかなか減らないのではないかと思います。消費者保護政策があまりにも貧困だからです。一般常識とはかけ離れた高利を法律で認めてあげる政府・お役人。天下りを受け入れ、多額の献金をする業界。一般消費者保護などおきざりです。

クレジット・サラ金被害者はよくこんなふうに例えられます。例えば自動車同士、衝突事故を起こしたとします。衝突はよく前を見ていれば避けられたかもしれません。運転が下手だった。注意力散漫だった。運が悪かった。こんな風に片づけられがちです。

しかし道路が見通しが悪く、危険な場所だったらどうでしょう。危険と承知しながら放置していた道路管理者に責任はないでしょうか。危険な場所でなければ事故は起こらなかったかもしれません。そもそも自動車さえなければ絶対に事故は起きませんでした。
事故を起こした人は、今日の自動車社会の被害者とも言えるでしょう。破産者も同じ事です。そもそも高利貸しがこの世に存在しなければ破産することはなかったはずです。
それは極論としても、違法な高金利が認められ、業者は貸せば儲かるからどんどん野放しに貸し付けるという今のシステムでは、破綻者が増大するのは当たり前です。破産者は今のシステムの被害者なのです。

破産手続きについて

1. 申立先

自分の住所地を管轄する地方裁判所です。住所地とは住民票上の住所ではなく、実際に住んでいるところという解釈です。仕事の関係で住民票を移さずにいるような状態で、よく住民票上の住所にも帰っているという場合は、自分の都合のいい方を選択できる余地があります。
また地方裁判所は、さらに各支部が存在しますので、自分の住所地はどこの管轄になるのかよくわからない場合は、裁判所に問い合わせて下さい。

2. 申立書

裁判所に、定型の破産申立書が備えおかれている場合がほとんどです。裁判所に行けば無料でもらえます。

申立書自体の記入はさほど難しくありませんが、破産申立に至った経緯については、具体的に詳しく書く必要があり、単に「生活費にあてた」などではもっと詳しく記載して欲しいと指摘されるでしょう。なぜ生活費が不足したのか、詳しく書かなければなりません。また自分では借金とは関係ないと思っていることでも、実は多いに関係があったりします。自分の過去を振り返ることが必要になってきます。

3. 添付書類

大抵次のような書類を要求されます。ただし裁判所によって若干違います。紛失等で用意できない場合は、代わりになるものを用意するか、添付できない理由を書き添えた方がよいでしょう。

  • 住民票(記載事項に省略のないもので、世帯全員が記載されているもの)
  • 戸籍謄本
  • 賃貸借契約書写し(アパートや貸家にお住まいの場合)
  • 給与明細書(最近2ヶ月分) 同居家族の分も
  • 源泉徴収票写し(直近のもの) 同居家族の分も
  • 確定申告書(控)の写し
  • 自動車登録証(車検証)の写し
  • 生命保険証書の写し、解約返戻金の証明書
  • 不動産登記簿謄本(持ち家の場合)
  • 預金通帳の写し
  • 家計収支表
  • 業者との契約書し、請求書、領収書、振込書等借入の事実が分かる資料の写し
  • 年金証書の写し
4. 費用

印紙 1500円(免責の600円を含みます)
予納郵券(切手) 約2,000円
予納金(現金) 11,859円(不動産などの資産がない場合) 不動産などの資産があり破産管財人が選任されると最低でも200,000円程度必要になります。

司法書士や弁護士に依頼した場合、このほかに司法書士、弁護士の報酬が必要です。

5. 申立

申立をすると、受理証明書を無料で発行する裁判所が増えてきました。本来は250円費用がかかります。受理証明書をもらったらそのコピーを各債権者に郵送しましょう。

債権者は破産をしたことがわかれば、取立をやめます。裁判所からの債権者の通知は申立後早くても1週間程度かかるようです。自分で通知した方が、早く取立が止まります。

6. 手続きの流れ (不動産などの資産がない場合)
  1. 申立書提出
  2. 破産審尋・・・裁判所から面接のため呼び出しを受けます。書類が整っている場合は省略されることもあります。
  3. 破産決定・・・不動産などの資産がない場合、配当等を行う破産手続きは行われず、「同時廃止決定」となります。
  4. 免責決定・・・決定が確定すると、債務の支払義務がなくなります。復権し破産者でなくなります。

免責決定まで、早ければ申立後4ヶ月くらいです。

7. 手続きの流れ(不動産などの資産がある場合)
  1. 申立書提出
  2. 破産審尋・・・裁判所から面接のため呼び出しを受けます。書類が整っている場合は省略されることもあります。
  3. 破産決定・・・破産管財人選任
  4. 破産手続き・・・破産管財人により破産手続きが進められます。不動産は通常競売や売却処分になります。
  5. 債権者集会・・・何回か行われることもあります。
  6. 免責決定

免責決定まで、早ければ申立後8ヶ月くらい、長いと2年くらいかかることもあります。

 

8. 免責不許可事由

次のような行為があると免責を受けられないことがあります。

  1. 浪費・賭博が原因で借金をした場合
  2. 虚偽の債権者名簿の提出、虚偽の財産陳述について
    届出を忘れていたら債務が新たに判明した場合、上申書にて直ちに裁判所に報告して下さい。
  3. 詐術を用いた信用取引による財産取得
    年収を偽ったり、他社の借入を偽ったことも広義には詐術にあたると考えられますが、実際にはあまり問題となりません。
  4. 過去10年間に免責決定を受けている場合
    過去に破産したことがない人には関係ありません。
  5. 商業帳簿作成義務違反
    現実には、あまり問題になりません。

現実によくあるのは、ギャンブル(パチンコや競馬等)に借金したお金をつぎ込んでいた場合と、クレジットで多額の借金を負った場合です。
あまりにもひどい場合は、免責不許可となった事例も過去にはありますが、ほとんど場合裁判官の裁量で免責となっています。

民事再生手続きについて

>>(1)民事再生手続とは

民事再生法は平成12年に始まった手続ですが、対象は企業を念頭に置いたものでした。

平成13年4月からは、民事再生法が改正され個人版民事再生手続がスタートしました。これにより個人でも民事再生手続を利用できるようになりました。「個人再生手続」とも呼ばれています。個人とは、商売をやっている事業主だけでなく、給与所得者(いわゆるサラリーマン)も含みます。対象者については下記に詳しく記載したのでご覧下さい。

個人再生手続を利用することにより、破産せずに債務の整理を行うことができるようになりました。今までは個人が取りうる債務整理手続は、破産か特定調停や任意整理しかありませんでした。極端に言えば、全く払わず免除してもらうか、何とか全部支払うか、オールオアナッシングだったわけです。個人再生手続は、原則として債権額の5分の1を支払えば、あとは免除になります。

また新しく住宅ローン特則が設けられました。住宅を手放さずに高利な借入先だけを債務整理することができるようになりました。但しこれには厳格な要件があるります。詳しくは下記の説明をお読みください。

個人再生手続は次の2つのものがあります。
(1)小規模個人再生
(2)給与所得者等再生

>>(2)対象者

対象者の例を挙げます。詳しくは(3)(4)のそれぞれの手続の解説をご覧下さい。

  小規模個人再生 給与所得者等再生
個人事業主 ×
会社員
公務員
農家 ×(但し兼業農家は○)
年金生活者
失業手当受給者 × ×
不動産仲介業者 ×
専業主婦 × ×
>>(3)小規模個人再生の対象者

小規模個人再生は、個人事業主を念頭に置いた手続ですが、サラリーマンも利用できます。

将来において継続的にまたは反復して収入を得る見込みがあり、かつ、再生債権の総額が3000万円を超えないことが必要です。収入があることが絶対条件です。その収入は、3月に1回以上の割合で収入を得る見込みがあることが目安です。そして借金は3000万円以内でなければなりません。但し住宅ローン特則を利用する場合は、住宅ローンは3000万円には含めません。

>>(4)給与所得者等再生の対象者

給与所得者等再生手続はいわゆるサラリーマン向けの手続です。 小規模個人再生手続の要件を満たす債務者のうち、給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって、かつ、その額の変動の幅が小さいと見込まれることが必要です。 収入の変動の幅が小さいというのは、年収ベースで5分の1(20パーセント)程度を基準として考えればよいでしょう。20パーセントの変動幅に収まれば、変動の幅が小さいということになります。

給与所得者等再生手続が利用できる人は、小規模個人再生手続も利用できます。給与者等再生手続で申立をしておいて、だめなら小規模個人再生手続を求めることができるというのが原則なのですが、実務上は裁判所からのお願いということもあり、給与者等再生手続がだめなら小規模個人再生手続を求めるとする申立ができない地域もあります。

>>(5)再生債権の総額

個人再生手続を利用するにはいくつか条件がありますが、あまり借金が多すぎても利用できません。再生債権の総額が3000万円以下でないといけません。借金の合計が3000万円以下でなければならないということです。この金額には次のものは含まれません。
①住宅資金貸付債権の全額
②別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額
③再生手続開始前の罰金、科料、刑事訴訟費用、追徴金または過料(共益債権または一般優先債権であるものを除く)

ちょっと難しいので例をあげて説明します。

①住宅資金貸付債権の全額
あとで解説する住宅ローン特則を利用する場合、住宅ローンの金額は除きます。 住宅ローン特則を利用しないで、個人再生手続を利用する場合は、住宅ローンも3000万円に含めて考えることになります。但し住宅ローンには通常不動産に担保がついていますから、次の②の金額を除いて考える必要があります。
②別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額
例えば、不動産の価値が2000万円あるが、担保がついている抵当権者への借金は2800万円ある場合を考えます。抵当権が実行されると抵当権者は不動産の強制競売により2000万円を手にすることができます。この2000万円は含まれないということです。 2800万円-2000万円=800万円 この800万円が再生債権に含まれます。 具体的に例を挙げます。  抵当権付借金 2800万円(担保不動産の価値 2000万円)  サラ金5社    250万円  クレジット会社  100万円  (合計)      3150万円 このような借金を抱えている人が個人再生手続を利用できるか考えてみます。原則的には借金の総額は5000万円以下でなければなりません。抵当権がついている不動産を持っている場合に、それが住宅ローンではない場合、あるいは住宅ローンであっても住宅ローン特則を利用しないで個人再生手続を利用する場合には、上記②により担保不動産の価値との差額(担保不足見込額と言います)のみを再生債権の総額に組み入れて計算します。 この場合抵当権付債権の担保不足見込額は2800万-2000万=800万円 ですので、 800万+250万+100万=1150万円 となります。 実際にはもうちょっと複雑な場合もあり、単純にこの計算があてはまらないこともありますので、専門家のアドバイスが不可欠になります。
>>(6)最低弁済額(3年間で最低でも支払わなければならない金額)

個人再生手続は原則3年間で、債権額の5分の1を支払えばあとは免除になると最初に説明しましたが、実際には支払わなければならない金額の計算方法は、複雑になります。小規模個人再生手続と給与者等再生手続とで分けて考える必要があります。 小規模個人再生手続の最低弁済額 ①100万円 ②借金の5分の1(但しこの金額が300万円を超える場合は300万円) ③清算価値 ①から③のいずれか多い金額になります。清算価値というのは破産をした場合に債権者に配当される金額という意味です。破産したときより多い金額を支払わなければならないという考えによるものです。通常は清算価値を考える必要はありませんが、不動産をたくさん所有している、価値の高い自動車を所有している、多額の退職金見込額(清算価値に含まれる退職金見込額は通常その8分の1です)がある場合などは清算価値が多額になることもあるので、注意が必要です。 なおここでいう「借金」の額というのは、手続中で確定されるので、自分が把握している金額とは異なることがあります。 具体例を挙げます。 借金が450万円で清算価値が30万円の場合 ②=90万円ですから、①②③を比べると、①が一番多いので、100万円になります。 借金が900万円で清算価値が110万円の場合 ②=180万円ですから、①②③を比べると、②が一番多いので、180万円になります。 借金が900万円で清算価値が200万円の場合 ②=180万円ですから、①②③を比べると、③が一番多いので、200万円になります。 借金が1800万円で清算価値が110万円の場合 5分の1=360万円ですが、300万円を超えているので、②=300万円になります。①②③を比べると、②が一番多いので、300万円になります。 借金が1800万円で清算価値が320万円の場合 5分の1=360万円ですが、300万円を超えているので、②=300万円になります。①②③を比べると、③が一番多いので、320万円になります。 給与所得者等再生手続の最低弁済額 ①から③は小規模個人再生手続と同じです。 ④可処分所得の2年分 可処分所得は、政令に基づき1年間の最低生活費を計算して、年収から最低生活費を引いた金額になります。その2年分の金額ということになります。 (可処分所得の2年分=「可処分所得-最低生活費」×2) 政令に基づき最低生活費を計算するには、過去2年分の源泉徴収票があれば計算できます。源泉徴収票がない場合は、所得税・住民税・社会保険料などの金額も記載された過去2年分の所得証明書があれば計算できます。 個人別生活費(地域・年齢で異なります)、世帯別生活費(地域で異なります)、冬季特別生活費(地域で異なります)、住居費(地域で異なります)、勤労必要経費(年収で異なります)を政令から金額を当てはめることで最低生活費を計算できます。 (最低生活費=個人別生活費+世帯別生活費+冬季特別生活費+住居費+勤労必要経費) 政令は要綱試案がhttp://www.moj.go.jp/MINJI/minji21.html でご覧いただけます。要綱試案と政令は同じ内容です。 計算はちょっと難しいので、専門家に計算してもらうとよいでしょう。日本司法書士会連合会は個人再生手続用の専門ソフトを外部に委託して開発しましたので、多重債務を扱う多くの司法書士事務所の所なら瞬時に計算ができます。もちろん当事務所でも瞬時に計算できます。 計算する場合の注意点は、同居者に収入がある場合です。例えば夫が申立人で妻が扶養親族でなく仕事を持っている場合は、個人別生活費に妻の生活費を合算できませんので注意が必要です。 また単身赴任している場合も要注意です。夫が申立人で単身赴任している場合、単身赴任先の住居費と家族が住んでいる住所地の住居費を合算します。 具体例を挙げます。 借金が450万円で清算価値が30万円、可処分所得の②年分が180万円の場合 ②=90万円ですから、①②③④を比べると、④が一番多いので、180万円になります。 借金が900万円で清算価値が110万円、可処分所得の2年分が60万円の場合 ②=180万円ですから、①②③④を比べると、②が一番多いので、180万円になります。 借金が900万円で清算価値が200万円、可処分所得の2年分が220万円の場合 ②=180万円ですから、①②③④を比べると、④が一番多いので、220万円になります。 借金が1800万円で清算価値が110万円、可処分所得の2年分が400万円の場合の場合 5分の1=360万円ですが、300万円を超えているので、②=300万円になります。①②③④を比べると、④が一番多いので、400万円になります。 借金が1800万円で清算価値が110万円、可処分所得の2年分が20万円の場合の場合 5分の1=360万円ですが、300万円を超えているので、②=300万円になります。①②③④を比べると、②が一番多いので、300万円になります。 小規模個人再生手続と比べると、最低弁済額が高くなることがわかります。これは給与所得者等再生手続は、政令により機械的に最低弁済額が算出できるのと引き替えに、債権者の同意が不要である点からくる帰結と言われています。弁済額が高くなるとしても、債権者の同意は要らないというメリットがあるということです。 逆に言えば、弁済額が低く抑えられる場合、債権者の半数の同意(正確にはちょっと違いますが、それはあとで説明します)が得られるのであれば、給与所得者等再生手続ではなく、小規模個人再生手続を選択するということも可能です。 最低生活費は政令により機械的に算出されるため、実際の生活費を反映していないことが多く、小規模個人再生を選択する方が、弁済額が低く抑えられより適切な場合もあります。

>>(7)債権者の同意について

給与所得者等再生手続では、手続上債権者の同意が要りません。せっかく申立をしたのに債権者の同意が得られず手続が終わってしまうということがないのです。 実際の事件件数を見てみると、同意不要という点が考慮されてのことと思いますが、給与所得者等再生手続の方が、小規模個人再生手続より件数が多いようです(平成13年の途中経過)。 小規模個人再生手続では、再生計画案について再生計画案に同意しない旨を書面で回答した議決権者が議決権者総数の半数に満たず、かつ、その議決権の数が議決権者の議決権の総額の2分の1を超えないことで足ります。何も言わなければ賛成したものとみなされるので、消極的同意といわれています。 つまり反対の債権者が債権者の総数の半数にみたず、かつ反対した債権者の債権額が債権総額の2分の1を越えなければ、再生計画案は債権者に認められたということになります。 もうちょっとわかりやすく言うと、債権者の数と債権額でそれぞれ条件があり、債権者の過半数の消極的同意(反対しないということ)があり、かつ債権者額の半分以上の消極的同意があることが再生計画認可の条件になります。 大口の債権者がいる場合、例えば借金の総額が5社で1000万円。そのうち1社が600万円以上の借金があるとすると、例え残り4社が反対しなかったとしても、600万円の大口債権者1社が反対すると、再生計画案は認可されません。 なお認可計画案というのは、この先何年間で(通常は3年間)、いくらを払っていくのかという弁済計画案のことです。

>>(8)住宅資金特別条項とは

平成13年改正民事再生法の目玉として住宅資金特別条項(住宅ローン特則)があります。これを利用すると住宅ローンは原則全額支払いを続けて、残りのサラ金や商工ローンなど高利の借金のみ3年間で上記の最低弁済額を支払えばよいことになります。 但し住宅ローンがあれば、必ず住宅ローン特則を利用できるわけではないことに注意してください。そもそも破綻に至った経緯を分析し、この先住宅ローンを支払い続けることができるのかどうか慎重に検討する必要があります。 住宅ローンを借り入れした際に、既にサラ金などの借入があったような場合は、サラ金の返済がなければ支払える場合も多いと思われますが、住宅ローン借入後に、何らかの事情でサラ金の借金ができた場合、サラ金から借入をしなければ生活できなかった事情を取り除かないと、民事再生手続を利用しても結局破綻するという事態が予想されます。 また住宅ローン特則を利用しても、他のサラ金等への支払は3年間はあるわけですので、3年間は大変苦しい支払になりえることも考慮する必要があります。但しこの点は手続上も考慮されており、3年間の支払がきつくならないような住宅ローンの支払方法を選択することもできます。

どのような住宅ローンの見直しができるか

住宅ローンは現状のまま支払を続けることもできますが、多くは住宅ローンの軽減を必要とする場合が多いため、月の支払額が軽減されるように見直しする必要があります。民事再生法では、次のような見直しができます。 最長10年のローンの延長 最終弁済期を最長10年延長できます。但し年齢制限があり、完済時に70歳を超える延長はできません。 ローンを延長すると、当然毎月の弁済額は減少します。しかしその分多く利息を支払うため、総支払額は増加します。サラリーマンの方は定年後ローンをどのように支払うか考慮しないと、定年後にローンが払えなくなる恐れがあるため、安易に延長すればよいというわけではありません。 当初3年間(計画案によっては最長5年間)のローンの軽減 当初3年間というのは、民事再生によって支払う住宅ローン以外の借金の返済期間です。この間は住宅ローン以外の支払が加わるため、編Sないがきつくなります。例えば民事再生によって毎月3万円の支払が必要で、住宅ローンは毎月9万円だったとします。当初3年間は合計12万円の支払になりますが、住宅ローンを当初3年間だけ支払額を6万円にしてもらえば、当初3年間の支払合計は9万円に収まります。但し4年目からは住宅ローンは9万円を超える支払(例えば10万円)になってしまいます。 またこの軽減を使うには、ローンの延長を行ったうえで検討することになっています。 実際どのような見直しが必要になり、金額はどうなるのかは専門家に依頼して計算してもらう必要があります。

住宅ローン特則が使えない場合

住宅を所有していれば、必ず民事再生の申立により住宅を守ることができるわけではありません。 様々な条件がありますが、特に気をつけなければ行けない場合をあげます。 住宅ローンの他に、担保が設定されている 最近サラ金各社が個人の不動産に目を付け、これを担保に「まとめローン」と称して多額の貸付を行っています。これを利用してサラ金の担保を設定してしまうと、住宅ローン特則は使えません。そもそも、サラ金などの不動産担保ローンは利用するべきではありません。サラ金の借金をサラ金でまとめて1本化しても、結果的には借金は減っておらず、何の解決にもなりません。それよりも借金を減額できる民事再生を利用するべきです。 不動産に差し押さえがされている 多いのは、固定資産税などを滞納して市町村から差し押さえをされるケースです。これを取り下げてもらわないと住宅ローン特則が利用できません。このような場合個人で交渉してもなかなか取下には応じてもらえません。専門家に依頼して解決するべきです。 住宅ローンの保証会社が、銀行(公庫)に代位弁済を行ってから6か月が経過している場合 保証会社が、銀行(公庫)に代わりに支払ってしまうことを代位弁済(だいいべんさい)と言います。 代位弁済後6か月が経過すると住宅ローン特則を利用できません。代位弁済に到るまで延滞から1年以上かかるのが通常です。住宅を守りたいのであれば、放置せずすぐに専門家に相談しましょう。 以上のような場合は、住宅ローン特則が使えません。但し、上記に該当してもそれを回避する方法がある場合もあります。また民事再生によらずとも解決できることもあります。大事なのは早急に専門家に相談することです。

銀行が協力してくれるのか

銀行から自宅の売却を迫られており、民事再生に協力してもらえる状態ではないという相談を受けることもあります。またそこまで関係が悪化していなくても、そもそも銀行が住宅ローンの見直しに協力してくれるはずがないと思っている方も多いようです。 しかし住宅ローン特則は、支払の見込があれば裁判所の判断で認可されるものです。銀行の協力があった方がスムーズですが、最悪銀行の同意が得られなくても、手続を進めることができます。

特定調停手続きについて

>>特定調停とは

正確には特定債務調停法による民事調停手続です。平成12年2月17日から施行されました。 それまでも債務弁済協定の調停というのがありましたが、その手続をさらに債務整理に適したものに改良した特別法です。

>>特定調停をするとどんなメリットがあるの

債務の支払いに関し、業者と話し合いができます。以後の月々の支払額を安くしてもらったり、債務の元金や利息のカットも話し合えます。 業者の利息は、利息制限法に違反した高金利です。(利息についての説明はこちらをどうぞ)それを借入当初から法定の金利で再計算して算出した元金を元に話し合いを求めることができます。 利息の違いにより元本がどう変化するのか、実際に計算してみましょう。

これは、業者の計算方法です。業者の計算では361,469円残元本があることになります。

取引日 借入額 返済額 日数 利率 利息 元金返済額 残元金
H10.3.5 500,000           500,000
H10.3.28   25,000 23 40% 12,602 12,398 487,602
H10.4.28   25,000 31 40% 16,565 8,435 479,167
H10.5.28   25,000 30 40% 15,753 9,247 469,920
H10.6.28   25,000 31 40% 15,964 9,036 460,884
H10.7.28   25,000 30 40% 15,152 9,848 451,036
H10.8.28   25,000 31 40% 15,322 9,678 441,358
H10.9.28   25,000 31 40% 14,994 10,006 431,352
H10.10.28   25,000 30 40% 14,181 10,819 420,533
H10.11.28   25,000 31 40% 14,286 10,714 409,819
H10.12.28   25,000 30 40% 13,473 11,527 398,292
H11.1.28   25,000 31 40% 13,531 11,469 386,823
H11.2.28   25,000 31 40% 13,141 11,859 374,964
H11.3.28   25,000 28 40% 11,505 13,495 361,469

下が、利息制限法の金利18%で計算した利息です。残元本は248,826円になっています。

取引日 借入額 返済額 日数 利率 利息 元金返済額 残元金
H10.3.5 500,000           500,000
H10.3.28   25,000 23 18% 5,671 19,329 480,671
H10.4.28   25,000 31 18% 7,348 17,652 463,019
H10.5.28   25,000 30 18% 6,850 18,150 444,869
H10.6.28   25,000 31 18% 6,801 18,199 426,670
H10.7.28   25,000 30 18% 6,312 18,688 407,982
H10.8.28   25,000 31 18% 6,237 18,763 389,219
H10.9.28   25,000 31 18% 5,950 19,050 370,169
H10.10.28   25,000 30 18% 5,476 19,524 350,645
H10.11.28   25,000 31 18% 5,360 19,640 331,005
H10.12.28   25,000 30 18% 4,897 20,103 310,902
H11.1.28   25,000 31 18% 4,752 20,248 290,654
H11.2.28   25,000 31 18% 4,443 20,557 270,097
H11.3.28   25,000 28 18% 3,729 21,271 248,826

比べてみると業者の計算では利息が高いため、元本がなかなか減らないのがわかります。 利息制限法の金利で計算すると1年間で11万円余り安くなります。この分余計に支払を続けてきたわけです。 特定調停では、この法定金利で再計算した残元金を元に以後の支払方法を定める扱いが、一般的ですが、調停委員の中には業者の主張ばかりを取り上げ、利息制限法で再計算してくれない方もいます。私は業者にばかり一方的に有利に扱うことには大反対です。そもそも業者は違法な金利を得ているわけですから、利息制限法で再計算した残元金が元になるのは、当然のことと考えます。 上記の計算を行うEXCEL用ワークシートファイルをダウンロードのページに置いてあります。ご利用下さい。

取引経過の開示請求ができる

利息制限法で再計算するには、業者との取引経過が明らかでないと計算できません。金融庁ガイドライン3-2-3(1)で「債務者、保証人その他の債務の弁済を行おうとする者から、帳簿の記載事項のうち、当該弁済に係る債務の内容について開示を求められたときに協力すること。」と資料開示の協力規定が業者に定められています。しかし現実には、これを無視したりする業者もおり、調停の際の妨げとなっていました。 特定調停では、調停委員に資料請求できる権限が与えられ、従わない業者は過料の制裁が科せられます。

法人も利用できる

会社が支払が苦しくなってくると、今までは会社更生法などで再建の道がありましたが、これは事実上の倒産を意味し、経営者にとってはなかなか踏ん切りがつかない手続きでした。 特定調停は会社などの法人も申し立てることができ、債権者から支払額や支払期限、支払方法などについて話し合いがもてます。

強制執行を停止できる

これからの支払について話し合う中で、財産を差押さえられたのでは、以後の支払のめどが立ちません。特定調停では差押を停止させることができます。しかし必ず停止が認められるわけではありません。

申立先

簡易裁判所です。借り入れた業者の営業所を管轄する簡易裁判所になります。 複数の管轄またがる場合、例えば主に借り入れしているところは東京都23区内の業者だが、横浜や大阪の業者からも借入があるようなときは、東京簡易裁判所に、横浜と大阪の申立も一緒に申し立てることができます。

申立方法

各地の簡易裁判所に、定型の申立用紙があります。印紙は通常300円で足りると思います。 切手も同時に納めますが、裁判所によって額が違うため確認して下さい。数百円程度と思います。 また業者の資格証明書(代表者事項証明書や会社登記事項証明書)を要求されることもあります。これは法務局に郵送で取り寄せができます。よくわからない場合は、司法書士に問い合わせて下さい。 それから資産目録と債権者一覧表を提出することになっています。これも定型の用紙が用意されています。

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